クトゥルフ神話とは・・・?


・クトゥルフ神話の黎明
クトゥルフ神話とは、1920年代、アメリカに住む小説家、HPラヴクラフトによって始められた、
一連の宇宙的恐怖を扱った小説群の俗称です。
ラヴクラフトは当時の恐怖小説の専門紙「ウィアードテールズ」を主な活動の場としていました。
代表作である「クトゥルフの呼び声」(小説の)や「ダニッチの怪」もそこで生まれました。
ラヴクラフトの恐怖小説には、吸血鬼や幽霊のようなポピュラーなモンスターは登場しません。
「ネクロノミコン」「アブドゥル・アルハザード」「ニャルラトテップ」「アザトース」「インスマス」「アーカム」etc・・・
クトゥルフ神話と言われるとイマイチという人でも、彼が創作した固有名詞に関しては知る人が多いことでしょう。
彼の小説には既存の恐怖小説には無い、実に刺激的で、スケールの大きなモンスター達が登場するのです。

クトゥルフ神話のおもしろいところは、その作者がラヴクラフトに限定されないところにあります。
彼の作り出した無数の固有名詞は実に刺激的だったため、
彼の友人である作家達から、是非名前を使わせて欲しいという希望が出されました。
この願いを彼は快く受け入れ、ここに一連のクトゥルフ神話小説群が生まれたのです。
当時の彼には、「クトゥルフ神話」というような体系的な発想はなかったようです。
(大体、旧支配者の一体に過ぎないクトゥルフの名前がなぜ使われるのか?)
ただ、彼らはお互いの小道具(モンスターや魔導書、人名など)を交換して、
お互いの作品の中で使うという「遊び」を行っていたのです。
そんな遊びの中で、クトゥルフ神話の世界は広がっていき、
彼らの作品は評価されるようになっていったのです。

さて、そんなこんなでラヴクラフトは「ウィアードテールズ」紙上でもかなり有名な作家に成長しました。
新たに「ウィアードテールズ」に投稿するようになった作家達にとっても、クトゥルフ神話は魅力的な素材でした。
そうした新人作家達から、クトゥルフ神話の名詞を使いたいという希望が出されると、
ラヴクラフトはそれを快く受け入れました。
1930年代始めにはこの「ラヴクラフト・サークル」は絶頂期を迎え、多くの優れた作家達が誕生しました。

しかし1937年、ラヴクラフトは癌で死亡します。
この後、ラヴクラフト・サークルも急速に沈静化し、クトゥルフ神話作品はすっかり身を潜めます。
「ウィアードテールズ」紙も売り上げが落ち、ラヴクラフトの名も人々の記憶から薄れていきました。
・・・このまま終わってしまっていれば、「クトゥルフ神話」も「ゴシックホラーの父」も無かったことでしょう。


・ダーレス以降
ラヴクラフト亡き後、この意志を引き継いだのがオーガスト・ダーレスです。
ダーレスは師匠であるラヴクラフトの作品を、
なんとしても単行本にしようと東奔西走し、ついにそれを成し遂げます。
彼の作った出版社「アーカム・ハウス」は、この後クトゥルフ神話の物語を全て独占していきます。
ラヴクラフトの残したメモを手がかりに、ダーレスが小説を書く・・・
ダーレスはそれをラヴクラフトとダーレスの共著として「アーカム・ハウス」から出版しました。
一見この行為は「ずるい」もののようにも見えますが、
師匠の名を残したいというダーレスの執念とも見て取れるでしょう。

クトゥルフ神話を一つの神話として体系化したのが、このダーレスです。
また、ダーレスはクトゥルフ神話の中に、善悪二元論を持ち込みました。
善の「旧神」と、悪の「旧支配者」の対立の構図です。
これが現在でも実に様々な論議を巻き起こす原因となっているのですが・・・
さらには「旧支配者」に所謂四大元素をあてはめたのです。
ダーレスが行った中で最悪の行為(悪との決め付けはよくないですか)は、
これらのことをいかにもラヴクラフトが考えたことのように宣伝したことです。
この争議は今でもたまに耳にしますが、結局のところ、
「クトゥルフ神話」は素材であって体系ではないので、
捕らえ方は作家一人一人にあると考えるのが最良であると思われます。
(「ニャルラトテップはこんなんじゃないやい!」とか言ってはイケナイのです)

それからしばらくの間、クトゥルフ神話の作品は「アーカム・ハウス」が独占していました。
イコール、ダーレスの作品だけが、クトゥルフ神話として出版されていたのです。
しかし、1960年代になると、そういった規制が緩くなってました。
キャンベルのクトゥルフ神話小説をダーレスが高く評価したからなのか、
それともダーレスが自分に限界を感じて外部に寛容になったからなのか、
詳しいことはさておき、再び複数の作家達によるクトゥルフ神話の想像が始まったのです。

こうしたムーブメントの中で、熱狂的なラヴクラフトファンだけでなく、
コリン・ウィルソンや、スティーブン・キングなどといった、
現在でも有名な作家達も神話作品を手がけるようになってきました。
ラヴクラフトの作品に登場した名詞や世界観は、こうして世間一般に浸透していったのです。
もっとも、おかげさまで現在ではこれらの固有名詞はすっかり安売りされてしまっていて、
一体どれがクトゥルフ神話モノなのかさっぱり判らないという始末になっています。
しかし神話とは元々そういったものなのでしょう。
一部のトンデモ研究家(含私)の曲解によって歪められる辺り、実に現実の神話らしいではないですか!


・日本のクトゥルフ
日本にクトゥルフ神話が紹介されたのは、実はかなり昔の話です。
そもそも1948年に「宝石」紙上に連載されていた「怪談入門」の中で大きく取り上げられ、
賞賛されたというのが始まりのようです。
著者は、なんと「探偵小説の父」江戸川乱歩氏です。
乱歩によって絶賛されたラヴクラフトの小説は、その後「宝石」で次々と紹介されました。
これも、アメリカでダーレスがラヴクラフトの名前を一心に広めようとした成果の一つでしょう。

当時の日本ではまだ「クトゥルフ神話」という体系はそれ程語られていませんでした。
この一連の神話体系がもてはやされるようになったのは、1972年頃になってからです。
日本のアーカム・ハウス創土社が誕生したのです。
「SFマガジン」でクトゥルフ神話の特集が組まれると、
各出版社はこぞって「クトゥルフ神話」の小説群を出版し始めました。
国書刊行会の「真ク・リトル・リトル神話体系」や「定本ラヴクラフト全集」、
青心社の「クトゥルー」、
創元推理文庫の「ラヴクラフト全集」といった、
名著が次々と発行されて、1980年代には絶頂期を迎えました。

かくして現在、クトゥルフ神話作品は未だに根強く人気を博しています。
無数の小説群が作り出され、ゲームやコミックにも題材にされたものが増えています。
名詞だけを拝借したものを数に入れれば、その量は計り知れない程です。
私がこのページで紹介している「クトゥルフの呼び声」も、そんな枝葉末節の一つなのです。

長々とした話にお付き合いいただき、まことにありがとうございます。
クトゥルフ神話の歴史の理解の一助になっていただけたら幸いです。
もう、クトゥルフ神話が実在のモノだなんて曲解は、無くなったとは思いますが・・・
でも、現実に即した面が色々と発見されてもいるので、一概に創作とは言い切れないところもあるのです。
その辺りをご了承ください。
(ちなみに、ラヴクラフトが魔術師だったという類のウワサはデマです。面白い話ですけど)



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